ご逝去後の安置 | 葬送文化
枕飾りに込められた意味と、故人を偲ぶ作法

身近な方が亡くなられた直後、枕元に飾られる「枕飾り」。なぜこれらをお供えするのか、その意味をご存知でしょうか。この記事では、一膳飯や枕経、北枕といった風習の由来や背景を、ひとつずつ丁寧に読み解いていきます。
ご逝去からお通夜までの間、故人様の枕元にお供えする枕飾りの意味をご存知でしょうか。大切な方が亡くなられた直後は、深い悲しみの中で様々な準備に追われます。その中で行われる枕飾りや一膳飯、枕経といった古くからの習わしには、故人様の旅立ちを安らかなものにしたいと願う、残された人々の祈りが込められています。この記事では、なぜそのような作法が生まれたのか、その背景にある歴史や人々の想いをひとつずつ丁寧に読み解いていきます。ご逝去直後の慌ただしい時間の中で、故人様と心静かに向き合う一助となれば幸いです。作法の意味を知ることで、故人様を偲ぶ気持ちがより一層深まることでしょう。
枕飾りに並べるものと、ひとつずつの意味
枕飾りとは、ご遺体をご安置した後、お通夜が始まるまで枕元にお供えする祭壇のことです。宗派や地域によって違いはありますが、故人様の安らかな旅立ちを祈り、冥土での飢えや渇きを癒すための品々が供えられます。ここでは、一般的な仏式の枕飾りに含まれるものと、そこに込められた意味について解説します。
枕飾りの基本となる品々
枕飾りは、一般的に白木の台や白い布をかけた小机の上に整えられます。中心となるのは「三具足(みつぐそく)」と呼ばれる仏具です。
- 香炉(こうろ):お線香を立てるための仏具です。故人様は香りを召し上がるとされ(食香:じきこう)、お線香の煙を通じて仏様の世界とつながるとも言われています。
- 燭台(しょくだい):ろうそくを立てる仏具です。灯りは、故人様が迷わずに冥土へ進めるよう、足元を照らす道しるべの役割があるとされています。
- 花立(はなたて):樒(しきみ)や白い花などを飾ります。樒の強い香りは邪気を払うと信じられてきました。
これらの三具足に加えて、水やお茶、そして後述する一膳飯や枕団子などをお供えするのが一般的です。お線香やろうそくの火は、ご遺族が交代で見守り、お通夜まで絶やさないように努めるのが習わしです。これは、故人様が寂しくないように、また道に迷わないようにという願いの表れです。
枕飾りの道具とそれぞれの意味
枕飾りに並べられる道具には、一つひとつに故人様を想う心が込められています。その代表的なものを下の表にまとめました。
| 品名 | 内容・意味 |
|---|---|
| 三具足(香炉・燭台・花立) | 仏様への基本的なお供え物。故人様の供養に欠かせない仏具です。 |
| 水・お茶 | 故人様の喉の渇きを潤すためにお供えします。毎日新しいものに取り替えるのが丁寧な作法です。 |
| 一膳飯(いちぜんめし) | 故人様が生前使っていたお茶碗にご飯を山盛りにし、箸を一本立てたもの。冥土への旅の弁当とされます。 |
| 枕団子(まくらだんご) | 冥土への旅の途中で食べるお弁当、または旅の盤纏(路銀)とされています。数は六道輪廻にちなみ6個が一般的です。 |
| 守り刀(まもりがたな) | 魔除けのために、故人様の胸元や枕元に置かれる刃物です。鏡やハサミで代用することもあります。 |
これらの品々は、葬儀社が用意することがほとんどです。もしもの時は、まず落ち着いて信頼できる葬儀社に連絡することが大切です。アオバヤでは、山形市・郡山市・宇都宮市・壬生町において、24時間365日、深夜・早朝を問わずご逝去の連絡に対応しております。
一膳飯・枕団子はなぜ供えるのか
枕飾りの中でも特に象徴的なお供え物が「一膳飯」と「枕団子」です。これらは、故人様がこれから始まる冥土への旅路で困ることがないように、という深い願いが込められたものです。その由来や意味を詳しく見ていきましょう。
故人が生前使っていた茶碗で供える「一膳飯」
一膳飯は、故人様が生前に愛用されていたお茶碗に、炊き立てのご飯を山盛りにし、お箸を垂直に一本(または二本揃えて)立てたものです。これにはいくつかの意味があると言われています。
- 冥土への旅の弁当:山盛りのご飯は、長い旅路の食料となるようにという願いが込められています。
- 現世での最後の食事:この世で召し上がる最後のお食事という意味合いもあります。
- 故人のものであるという印:お箸を立てる行為は、普段の食事では行儀が悪いとされていますが、あえてそうすることで「これは故人様のものですよ」という印を示し、他の者が手を付けないようにする意味があります。また、箸が一本橋の役割を果たし、故人様を彼岸へ導くという説や、魔除けの意味があるとも言われています。
お箸を一本だけ立てるか、二本揃えて立てるかは地域によって異なります。いずれにせよ、故人様が無事に旅立てるようにという祈りが込められた大切な習わしです。ご逝去直後の流れや手順について不安な方は、危篤・逝去後の流れと手順|深夜でも慌てないためにまずすべきことの記事もご参照ください。
冥土への旅の糧となる「枕団子」
枕団子は、上新粉(米の粉)で作った白いお団子のことです。このお団子も、一膳飯と同様に、故人様の冥土への旅を支えるためのものとされています。
その数については諸説あり、地域や宗派によって異なりますが、6個お供えするのが一般的です。これは仏教の「六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)」を象徴しており、故人様がどの世界に生まれ変わるとしても、その道中の糧となるようにという願いが込められています。また、お団子を旅の途中で出会う人々に分け与え、徳を積むためという説もあります。
その他にも、初七日から四十九日までの7回のお裁きに対応する7個、十三仏信仰にちなんだ13個など、様々な考え方があります。いずれも、故人様が空腹に苦しむことなく、安らかに旅を続けられるようにと願うご遺族の優しい気持ちの表れと言えるでしょう。
枕経(まくらぎょう)が果たしてきた役割
枕飾りを整えた後、ご遺族の準備が整った段階で、菩提寺の僧侶にお越しいただき、故人様の枕元で最初にあげていただくお経が「枕経(まくらぎょう)」です。この枕経は、単にお経を読むという行為だけでなく、ご遺族の心を支える重要な役割を担ってきました。
本来は臨終の際に読まれていたお経
枕経という言葉の通り、本来は死が間近に迫った方の枕元で、安らかに息を引き取れるようにと読まれるお経でした。お釈迦様が入滅される際に、弟子たちがお経を唱えながらその最期を見守ったことに由来すると言われています。
かつてはご自宅で最期を迎えることが一般的だったため、医師が臨終を告げる前に、僧侶が枕元に駆けつけてお経を読んでいました。これは、仏の弟子として新たな旅立ちを迎えるための儀式であり、故人様の信仰心を確かなものにするという意味合いがありました。
現代における枕経の役割
しかし、現代では病院や施設で亡くなる方が大半を占めるようになり、臨終の瞬間に僧侶が立ち会うことはほとんどなくなりました。そのため、枕経はご逝去後、ご遺体を安置してから初めて読まれるお経へと変化しています。
現代における枕経の役割は、以下のように考えられています。
- 故人様への最初の供養:亡くなられてから最初に行われる仏事として、故人様の冥福を祈ります。
- ご遺族の心のケア:僧侶の読経を聞くことで、ご遺族は故人様の死を静かに受け止め、心を落ち着ける時間を持つことができます。大切な方を失った悲しみを癒す「グリーフケア」の第一歩とも言えるでしょう。
- 葬儀の打ち合わせ:枕経をあげていただいた後、僧侶と今後の葬儀日程や戒名についての打ち合わせを行うのが一般的です。
このように、枕経は時代とともにその形式を変えながらも、故人様を弔い、残されたご遺族の心に寄り添うという大切な役割を果たし続けているのです。ただし、浄土真宗のように、亡くなるとすぐに阿弥陀如来の力によって極楽浄土へ往生するという教えの宗派では、枕経の考え方が異なる場合もあります。
北枕にするのはなぜか──その由来と諸説

ご遺体を安置する際、頭を北に向けて寝かせる「北枕」という習わしがあります。日常では「縁起が悪い」と避けられることも多い北枕ですが、なぜご葬儀の場面では重要視されるのでしょうか。その由来には、仏教の教えに基づいた深い理由があります。
お釈迦様の入滅に由来する説
北枕の最も有力な由来は、お釈迦様が亡くなられた(入滅された)際の姿にあります。お釈迦様は、インドのクシナガラ城外の沙羅双樹の下で、頭を北に、顔を西に向け、右脇腹を下にして横たわられました。この姿は「頭北面西右脇臥(ずほくめんさいうきょうが)」と呼ばれています。
この故事にならい、故人様もお釈迦様と同じ姿で安置することで、安らかに迷わず悟りの世界へ旅立てるようにという願いを込めて、北枕にするようになったと言われています。つまり、北枕は本来、縁起が悪いものではなく、故人様にとっては最も安らかで尊い寝方なのです。
「北」が持つ特別な意味とその他の説
北枕の由来には、お釈迦様の故事以外にもいくつかの説が存在します。文化や信仰によって様々な解釈が生まれてきたことがわかります。
- 北極星信仰に由来する説:北の空に輝く北極星は、古代中国において宇宙の中心であり、天帝の住まう場所とされていました。死後、魂が還る場所として北が神聖視されていたため、北枕にするという考え方です。
- 住居構造に由来する説:昔の日本の家屋は南向きに建てられることが多く、部屋の最も奥まった場所、つまり上座が北側にあたることが一般的でした。最も敬うべき故人様を上座にお寝かせするという考えから、自然と北枕になったという説です。
- 魂の再生を願う説:「北」は五行思想で「水」を意味し、生命の根源や再生を象徴します。また、干支の始まりである「子」の方角でもあることから、新たな生への旅立ちを願う意味が込められているとも言われます。
このように、北枕には様々な説がありますが、いずれも故人様を敬い、安らかな旅立ちを願う気持ちが根底にあります。住宅事情などで北枕にできない場合は、西を向ける「西枕」でも良いとされています。これは、阿弥陀如来のいる極楽浄土が西方にあるという信仰に基づいています。
病院や施設で亡くなることが増えた現代の枕飾り
かつては自宅で最期を迎え、家族に見守られながら枕飾りを整えるのが一般的でした。しかし、現代では医療の進歩とともに、8割以上の方が病院や施設で亡くなられています。こうした社会の変化は、枕飾りやご安置のあり方にも影響を与えています。
ご自宅以外での安置と枕飾り
病院や施設で亡くなられた場合、ご遺体は霊安室に一時的に安置されますが、長時間とどまることはできません。そのため、速やかにご安置場所を決め、搬送する必要があります。ご安置場所としては、ご自宅か葬儀社の会館(安置施設)が主な選択肢となります。
マンションなどの集合住宅にお住まいの場合や、ご近所への配慮、あるいは弔問客の対応が難しいといった理由から、近年は葬儀社の会館にご安置するケースが増えています。私たちアオバヤでは、山形・郡山・宇都宮・壬生に自社の安置施設を完備した会館を9館ご用意しており、ご自宅の状況やご希望に合わせて最適な場所をお選びいただけます。会館にご安置した場合でも、専用の安置室で枕飾りを整え、ご家族だけで静かにお線香をあげ、故人様とゆっくりお別れの時間を過ごすことが可能です。枕飾りの意味を大切にしながら、現代のライフスタイルに合わせた形をご提案いたします。
形式よりも「故人を想う心」を大切に
宗教観の多様化やライフスタイルの変化に伴い、枕飾りの形式も柔軟になってきています。例えば、仏式にこだわらず、故人様が好きだったお花やお菓子、趣味の品などを枕元にお供えする方もいらっしゃいます。
大切なのは、形式にこだわりすぎることなく、故人様を偲び、感謝を伝える気持ちです。地域密着で39年、累計1万件以上のご葬儀をお手伝いしてきたアオバヤでは、ご遺族様のお気持ちに寄り添うことを第一に考えております。もしもの時に慌てないためにも、葬儀に関する疑問や不安は無料の事前相談で解消しておくことをお勧めします。会員制度「こころの会」にご入会いただければ、月々の積立金なしで葬儀プランが割引になるなど、様々な特典もございます。
枕飾りは、故人様との最後の時間を過ごすための大切な儀式です。その意味を理解し、心を込めてお見送りすることが、何よりの供養となるでしょう。
ご逝去からお通夜までの間に行われる枕飾りや枕経には、故人様の安らかな旅立ちを願う、古くからの人々の祈りが込められています。一膳飯や枕団子は冥土への旅の糧となり、ろうそくの灯りは進むべき道を照らし、お線香の香りは故人様の食事となると信じられてきました。時代が変わり、ご葬儀の形が多様化しても、この枕飾りの意味の根底にある「故人を想う心」は変わりません。これらの作法は、故人様のためであると同時に、残されたご家族が死という現実と向き合い、心を落ち着けるための大切な時間でもあります。この記事が、故人様と過ごす最後のひとときを、より深く、心穏やかに過ごすための一助となれば幸いです。
よくあるご質問
❓ 枕飾りはいつまで飾っておくものですか?
枕飾りは、ご遺体をご安置してからお通夜が始まるまでお飾りするのが一般的です。お通夜の際に本祭壇が設けられると、そちらにお供え物などを移します。そして、ご出棺の際には、一膳飯や枕団子、お花などを棺の中にお納めし、故人様とともにお見送りします。ただし、地域や宗派の慣習によって異なる場合がありますので、詳しくは葬儀社の担当者にご確認ください。
❓ 枕飾りに宗派による違いはありますか?
はい、宗派によって違いがあります。例えば、浄土真宗では、亡くなるとすぐに阿弥陀如来の力によって極楽浄土へ往生すると考えられているため、冥土への旅支度という意味合いを持つ枕団子や一膳飯をお供えしないのが一般的です。また、神道では「枕直しの儀」として、お米、お塩、お水などをお供えします。キリスト教には枕飾りの習慣はありません。ご自身の宗派の作法がわからない場合は、菩提寺や葬儀社にご相談ください。
❓ 一膳飯や枕団子は、毎日交換する必要がありますか?
必ず毎日交換しなければならないという決まりはありませんが、可能な範囲で新しいものをお供えするのが丁寧な作法とされています。特に夏場は傷みやすいため、注意が必要です。毎日交換することが難しい場合は、お供えしたままでも問題ありません。ご遺族様の負担にならない範囲で、心を込めてお供えすることが大切です。
❓ 枕飾りの道具はどこで準備すればよいですか?
枕飾りに必要な三具足や小机などの道具一式は、ご依頼された葬儀社が準備するのが一般的です。ご遺族様がご用意するのは、故人様が生前使っていたお茶碗や、お供えするお水、お花などです。もしもの時は、まず葬儀社にご連絡いただければ、ご安置から枕飾りの設営まで全てお手伝いいたしますのでご安心ください。
❓ 自宅に安置できない場合、枕飾りはどうなりますか?
ご自宅にご安置できない場合は、葬儀社の会館などにある安置施設をご利用いただけます。多くの安置施設には、枕飾りを設営できるスペースが用意されています。ご遺族はそちらで枕飾りを整え、故人様と心静かにお過ごしいただくことが可能です。アオバヤでも専用の安置室をご用意しておりますので、ご自宅同様に故人様をお偲びいただけます。
❓ 枕経は必ず行わなければならないのでしょうか?
枕経は必ず行わなければならないという決まりはありません。近年では、ご逝去からお通夜までの時間が短い場合や、ご遺族のご意向により省略されるケースもあります。しかし、枕経は故人様への最初の供養であると同時に、ご遺族が心を落ち着ける大切な時間でもあります。菩提寺がある場合は、まずご住職に相談し、指示を仰ぐのが良いでしょう。
葬儀・事前相談のご相談はアオバヤ仏商へ
「うちの場合はいくらかかる?」「どのプランが合っている?」——アオバヤ仏商は山形市・郡山市・宇都宮市・壬生町に自社会館を構える地域密着の葬儀社です。ご相談・お見積りは無料、お電話は365日24時間承っております。
まだ具体的なご予定がない方は、無料の「Web会員」登録がおすすめです
入会金0円・積立なし。お名前とお電話番号だけ(約1分)でご登録いただけ、葬儀費用の割引などの特典をご利用いただけます。
※作法・しきたりは地域や宗派により異なります。ご不明な点はお気軽にお尋ねください。会員制度「こころの会」にご入会いただくと、葬儀の基本プランから8万円割引になります(こころの会のお申し込み)。

